2023年、あけましておめでとうございます。
今年は兎年ということで、兎の目が赤いことにちなんでカープの話をします。「年始早々から社長の趣味のカープかよ」と思われるでしょうが、ここでは、『㈱広島東洋カープ、グラフで見る健全経営とモチベ―ションの関係について』というテーマでお話しします。
カープは令和4年度セ・リーグ5位という成績でした。2016年から2018年の3連覇以降、4位、5位、4位、5位と低迷を続けています。カープファンは皆、4年前の3連覇は夢か幻だったのではと思い始めています。
まずカープの過去の成績を見てください(図1)。1950年の球団発足後25年間はずっと下位に低迷します。1975年、私が中学校2年生の時、山本浩二や衣笠等の活躍によりセ・リーグで初優勝を飾ります。その後16年間はセ・リーグ優勝6度、3度の日本一にも輝きます。1991年から25年後の2016年のセ・リーグ3連覇が始まるまでは再び低迷期に入ります。チーム成績は時代毎に極端で、それぞれに名前を付けると(私見)成長期、第1隆盛期、捲土重来期、第二隆盛期に分けることができます。捲土重来とは、敗者が復活を期して勢いを盛り返すために力を蓄えていることです。
チーム低迷の原因を分析してみると、成長期は資金不足の中で勝つことより無名選手を地道に育成強化した時代でした。捲土重来期のチーム低迷の原因の大きな要因となったのが1993年に始まったFAです。FAとは、選手があらゆる球団と選手契約ができる権利です。これによりカープからは、当時主力だった川口、江藤、金本、新監督の新井等が他球団に移籍し選手の力量が低下してしまいます。カープとジャイアンツのFA後の選手年俸総額は、ジャイアンツが概ね40億円に対しカープは20億円です。
しかし球団経営は、初優勝した1975年から2019年のコロナ前までの実に45年間連続の黒字経営です。島建の連続黒字期間の最長は現在の16年ですので、45年連続という数字が如何に凄いかわかると思います。
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【図1 カープのセ・リーグ順位と選手年棒総額の推移】

広島カープは、地元国会議員や新聞・電鉄の地元有力者が発起人となり1950年に創設されました。18年後の1968年に東洋工業(現マツダ)の第三代社長であった松田恒次氏がカープのオーナーを引き受けます。この方は自身の野球好きが講じてカープのオーナーになられたようで、東洋工業(現マツダ)は球団経営には関与しませんでした。この後、第四代社長である松田耕平氏の時にマツダの経営が悪化し、その責任を取り松田家はマツダから撤退します。
カープの正式社名は『株式会社広島東洋カープ』。東洋は東洋工業の名前が現在まで受け継がれています。現在の株は松田家が45%、マツダ関連会社が35%、球団関連会社が20%。これからもわかるようにカープは松田家の私有球団なのです。
プロ野球をビジネスモデルという観点からを見てみましょう。プロ野球は親会社により、鉄道系、新聞系、その他企業に分類することができます。鉄道系は阪神タイガース、西部ライオンズ、阪急ブレーブス、南海ホークス、近鉄バッファローズ、国鉄スワローズ。新聞系は読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ、毎日オリオンズ、産経アトムズ。その他企業として映画系で松竹ロビンズ、東映府ライアーズ、大映ユニオンズ。食品系には日本ハムファイターズ、ヤクルトスワローズ、千葉ロッテマリナーズ、ダイエーホークス、大洋ホエールズ。IT系にはソフトバンクホークス、楽天ゴールデンイーグルス、DeNAベイスターズ、オリックスバッファローズ等があります。プロ野球チームは、その時代の浮き沈みを反映し、カープ以外は皆な企業の広告塔です。12球団の内、カープだけが親会社の無い個人経営の会社なのです。
カープはチーム成績に関わらず45年間黒字経営を継続してきました。松田家が黒字経営にこだわるのは企業として当然で、45年間それを継続してきたのは凄いことですが、ファンにとっては関心のないことです。捲土重来期前半における球団の経営理念は、チーム成績を度返し、黒字経営ありきで観客動員等による収入により選手の年俸(支出)を決めるという、選手やファンを無視した経営にしか見えませんでした。
強いカープを再び見たい。勝つためには選手の質を上げることが必須です。カープは伝統とされる育成能力の高さに加え、育った選手が長くチームで活躍してくれることが課題であり、それにはやはりお金が必要でした。
捲土重来期、長い間低迷していたカープ球団に心強い後押しの話が持ち上がります。新球場マツダスタジアムの建設です。マツダスタジアムは、広島市、広島県、国、経済界等が建設費90億円を負担し2009年に完成します。これによる年間の観客動員数は、100万人から150万人に増加します(図2)。
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【図2 カープのホーム球場別 観客動員数の推移】

マツダスタジアム建設後の球団経営は、ファン拡大戦略等を積極的に展開し、黒字経営ありきの経営理念にファンや選手のモチベーションアップという要素が加わり、それに伴い成績もアップするという相乗効果をもたらしました(図3)。「カープ女子」と呼ばれる子供から野球をあまり知らない女性にもカープ人気が拡大し、人気上昇はチーム成績に連動し、2016年には25年ぶりのセ・リーグ制覇、その後は3連覇を達成します。
捲土重来期を脱した背景には育成能力の高さや地元愛があり、またFAで出て行った新井や黒田を再び向かい入れたオーナーの優しい人柄も見逃せません。
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【図3 筆者が考えるカープ球団の経営理念の変化】

以上が『㈱広島東洋カープ、グラフで見る健全経営とモチベーションの関係について』です。
・カープは3連覇後、ここ4年間再び低迷を続けています。原因は主力であった丸や鈴木誠也の離脱とも言われて言われています。
・島建ではここ数年、複数の社員の退職が続いています。退職された方々が丸や鈴木誠也とは言いませんが、明らかな戦力ダウンです。
・チームの成績や会社経営に安住の地はありません。
・執行部は今年も、過去のデータに基づく経営状況を的確に把握すると共に、社員皆さんのモチベーションを第一とした会社経営に取り組んでいく所存です。
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今年もよろしくお願いします。