読書の秋、スポーツの秋、そして何より食欲の秋が今年もやってきました。私は果物が大好きで、夏の終わりのシャインマスカットの後を受けた梨から柿へのリレーは、カープ25年ぶりのセリーグ制覇における黒田からジャクソン、中崎への盤石リレーに匹敵するほどの見事な継投です。
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私の中で秋の果物の抑えの切り札は「柿」です。地元出雲市平田地区は柿の名産地で、シーズン初めに登場してくる伊豆柿、生産量が多くメジャーな富有柿、そのまま食べると渋い西条柿など数種類の柿が数多く栽培されています。その中でも私の一押しは西条柿です。西条柿は渋柿ですがその歴史は古く、16世紀半ば毛利氏と尼子氏の覇権争いが行われていた頃には、既に武士の保存食として珍重されていたと言われています。昨今ではドライアイスを使った渋抜き技術が進み、青果として一般に食されるようになりました。他の柿に比べ形状が細長く縦に入った4つの溝がおしゃれで、色はちょっと上品な黄色に近い色をしています。渋抜き後の甘味が強いのはもちろんですが、中心部がゼリー状になるほど緻密な肉質が絶妙な食味をつくり出します。「こづち」という名称で全国にも出荷されています。
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平田に住んでいると、農家の庭先で干された吊し柿(干し柿)をいただく機会が多く、我が家でも昔から茶菓子としてよく登場していました。渋柿が渋いのは、成分として含まれているタンニンという物質が唾液等の水分に溶けることが原因のようです。干すことで水分を抜くと糖度が高くなり、その甘味は甘柿の約4倍にもなるそうです。昔は甘すぎる味と、白い粉を吹き黒くしわしわになった見た目からあまり好んで食べませんでした。数年前から食後にスコッチウイスキーを飲むようになり、そのお供として干し柿の食感と甘さが最高に合うことに気付きました。今、結構はまっています。
この年になりようやく「甘さが醸し出す渋さの魅力」がわかってきたのかも知れません。
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秋の夜長、今夜もスコッチウイスキーのロックを片手に干し柿をかじりながら、渋い大人を演じたいと思います。誰も見ていませんが・・・。
